フォルクスワーゲンの大規模リコール情報まとめ

フォルクスワーゲン(VW)は、その長い歴史の中で「大衆車にこそ革新を」という哲学を貫き、常に世界のコンパクトカーの基準を作り続けてきたメーカーです。特にゴルフは、8世代にわたる進化の中で、走行性能、安全性、デザインにおいて常に時代の先駆者として業界のスタンダードを塗り替えてきました。

しかし、どんな世界的メーカーであっても、技術的な複雑性が増す現代の車作りにおいて、不具合は発生します。特に近年、VWでは大規模なリコールが国土交通省に届け出られており、これらのニュースを聞いて不安に感じるユーザーも少なくありません。

リコールは設計や製造の過程に問題が見つかり、メーカーの判断によって回収・該当箇所の修理を実施する制度であり、修理費用はメーカーが無償で負担します。

 

 

1. フォルクスワーゲンの大規模リコールを紐解く

VWが過去数年間に届け出た主要なリコールは、トランスミッション、ブレーキシステム、そしてドアミラーなど多岐にわたります。

1-1. 乾式7速DSGに関するリコール(2019年)

VWが経験した中でも特に大規模なリコールの一つが、2019年8月に国土交通省に届け出られた乾式7速DSG(デュアルシフトギア)に関するものです。

■規模と影響

このリコールは30車種、計17万6068台という非常に大規模なものでした。

■不具合の部位

不具合が報告されたのは、主に小排気量モデルに採用されていた乾式7速DSGのメカトロニクスと呼ばれる部分です。

■具体的な内容

メカトロニクスのアッパーハウジングのねじ切り加工が不適切なため耐久性が不足し、継続的な油圧変化によりハウジングに亀裂が発生する可能性がありました。これにより油圧が低下し、最悪の場合、駆動力が伝達されず走行不能になるおそれがありました。走行中に激しい振動(ジャダー)が起こることも不具合内容に含まれていました。

■対策

メーカーはアッパーハウジングを対策品に交換することで対応しました。

DSGには、乾式7速の他に、上級グレードに採用される湿式6速や湿式7速が存在しますが、このリコールの対象は主に不具合報告が相次いでいた乾式7速DSGに集中していました。

1-2. 火災事故に関連したブレーキ関連リコール(2023年)

2023年12月には、神奈川県厚木市で発生した火災事故に関連したリコールが届け出られました。

■不具合の部位

制動装置(遮熱マット)

■具体的な内容

生産工場での組み付け作業が不適切であったため、ブレーキ液のリザーバータンクの遮熱マットが正しく取り付けられていない車両が存在しました。これによりエンジン高負荷時の熱によってリザーバータンクの端部が溶損し、ブレーキ液が漏れて高温の排気系部品に触れると火災となるおそれがありました。

■対象車種

ゴルフ GTI 2.0、ゴルフ R 2.0、ゴルフ R ヴァリアント 2.0、ゴルフ TDI、ゴルフ ヴァリアント TDIなど、計9車種が対象となりました。

VWはこの火災事故の原因を特定できなかったものの、遮熱マットの取り付け不備に起因している可能性を排除できないため、リコールとして届け出たとしています。改善策として、遮熱マットの組み付け状態の点検・修正と、全車両への新たな遮熱フォイルの取り付けが行われました。

1-3. ドアミラー脱落の危険性(2024年)

2024年7月には、後写鏡(ドアミラー)に関するリコールが届け出られました。

■不具合の内容

特定の環境下で紫外線の曝露が大きい場合、ミラーガラスの保護コーティング層の劣化が進行し、車両の走行振動などによりミラーガラス部に緩みが生じるおそれがありました。

■最悪の場合

ミラーガラス部が脱落し、後方の交通状況が確認できなくなるおそれがありました。

■対象車種

ゴルフ1.2、ゴルフヴァリアント1.2/1.4/オールトラック、ゴルフGTI、ゴルフR、ゴルフGTEなど、2013年5月~2017年9月に輸入された計79,762台が対象となりました。

■対策

全車両のドアミラーのミラーガラスを対策品と交換することで対応しています。

1-4. その他の最新リコール・サービスキャンペーン情報(2025年)

VWは常に品質維持のために様々な対応を行っています。2025年に入っても、以下のようなリコールやサービスキャンペーンが届け出られています。

■ID.4のリコール

2025年2月27日には、EVモデルであるID.4について、アウタードアハンドルの交換や、インフォテイメントシステムプログラムの不具合に関するリコールが届け出られました。

■T-Rocのリコール

2023年1月にはT-CROSS 1.0/85kWの座席ベルト等(コンビネーションメーター)の不具合に関する修理リコールが報告されており、2025年3月にはT-RocのLEDマトリックスヘッドライトの不具合に関するリコールが報告されています。

■ゴルフのサービスキャンペーン

2025年3月には、ゴルフおよびゴルフヴァリアントのパーキングロックソレノイドの不具合に関するサービスキャンペーンが実施されています。

 


 

2. リコール制度の正しい理解と確認方法

リコールは、製品に問題があった際にメーカーが責任をもって無償で修理する制度であり、VWグループジャパンが輸入販売した車両に関する情報が国土交通省に届け出られます。

2-1. 改善措置の種類

リコールに関連する改善措置には主に以下の4種類があります。

1.リコール

自動車の構造、装置または性能が安全上・公害防止上の規定に適合しなくなるおそれがある、または適合していない状態で、原因が設計または製作の過程にある場合に無料で修理する制度です。

2.改善対策

基準不適合状態ではないが、安全上または公害防止上放置できなくなるおそれがある、と判断される場合に無料で修理する制度です。

3.サービスキャンペーン

リコールや改善対策に該当しない場合で、使用者に通知して対策を講じる場合に無料で修理する制度です。2025年3月のゴルフのパーキングロックソレノイドの不具合などがこれに該当します。

4.自主改善

販売店装着アクセサリーなどの後付け部品が原因で保安基準に適合しなくなるおそれがある場合に、部品を回収し無料で修理する制度です。

2-2. 車が対象かを確認する方法

リコールの対象車両を所有している場合、通常メーカーから直接お知らせが届きますが、自分で確認することも可能です。

VWの公式ウェブサイトの「リコール等検索」(URL)画面で、車検証に記載されている車台番号(17桁)を入力することで、未実施の改善措置情報を検索できます。未対策作業項目がすでに実施済みの場合や車台番号が間違っている場合は、「未実施の改善措置はございません」と表示されます。

 


 

3. まとめ:安全と安心のための最終確認

リコール情報は一時的な懸念材料ではありますが、メーカーが責任をもって無償で対策を施しているという点で、購入後の安心につながるとも言えます。DSGやブレーキ関連の重要なリコールも、適切に改修されていれば問題ありません。

最終的に、運転支援機能はあくまで運転者の運転を支援する機能であり、システムが運転操作の主体を代替する自動運転ではないことを理解することが重要です。運転者は常に前方・周囲の状況を確認し、機能を過信・誤用せず、安全運転を行う責任があります。リコール対応で安心感が向上したVW車を選び、その性能を正しく理解して安全で快適なカーライフを送りましょう。

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