フォルクスワーゲン車の「TSI」とは何か?小さなエンジンで大きな走りを実現する「ダウンサイジングターボ」の秘密

 

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この記事の監修者

高木雅和(LUDIXカスタマイズプランナー)

1972年生まれ、東京都出身。 某有名カスタムバイクパーツメーカーを経て30年、2021年よりCreation & Supply を設立し、主に四輪用カスタムパーツの企画・開発をプロデュースしながら2024年にLÜDIXに参加し、カスタマイズプランナーとして活躍中

こんにちは!LUDIXの中西です。

フォルクスワーゲン(VW)のハッチバック車「ゴルフ」の購入を検討し始めると、「TSI」や「eTSI」といった言葉をよく目にすると思います。これらは単なるグレード名ではなく、フォルクスワーゲンの走りの哲学そのものを体現する、非常に重要なエンジン技術の名称なんです。

TSIという略称だけを見ても、それが何を意味しているのか全く見当がつかない方も多いかもしれません。しかし、この技術こそが、ゴルフをはじめとするVW車が世界中で「ベンチマーク(基準)」と称され、高い評価を受け続けている最大の理由の一つです。

この記事では、TSIエンジンの基本的な定義から、その革新的な技術、そして日常の運転にもたらすメリットまでを徹底的に解説していきます。

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なぜゴルフは愛される?デザイン・走り・安全性の秘密

 

 

1. TSIとは何か? その基本と「ダウンサイジング」の思想

TSIという文字は、フォルクスワーゲングループが商標を持つ、ターボチャージャー付きのガソリン直噴エンジンの総称です。

 

略称の意味:Turbocharged Stratified Injection

TSIは「Turbocharged Stratified Injection」の頭文字をとったもので、「ターボ過給成層噴射」を意味します。

この技術の根幹にあるのは、「ダウンサイジング」というコンセプトです。ダウンサイジングとは、エンジンの排気量や気筒数を減らしながらも、過給器(ターボチャージャー)を組み合わせることで、従来の大きなエンジンと同等、あるいはそれ以上の十分な出力とトルクを得ることを目指す設計思想です。

なぜダウンサイジングが必要なのか

▼ダウンサイジングターボイラスト

フォルクスワーゲンは、ダウンサイジングコンセプトを積極的に採用することで、年々厳しくなるCO2排出量削減といった環境性能への進化に対応しています。

小型化することで、以下の具体的なメリットが生まれます。

  • 軽量化
    エンジン本体を軽くできるため、運動性能も向上します。
  • 低燃費
    排気量を減らし、機械抵抗やポンピングロス(吸排気時の抵抗)を減らすことで、燃費が向上します。
  • 高性能
    ターボチャージャーの過給により、小排気量でありながら十分な力(トルク)を低回転域から発生させることができます。

結果として、TSIエンジンは、少ない燃料消費でパワーを向上させるという、高性能と低燃費を両立させた「新しい走り」を提供します。

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ターボを意識して走るとより一層の爽快感が味わえますよ。

特にエアクリーナーを社外品のパワークリーナー等に交換するとターボの吸引音が耳に聞こえてテンション上がります。

 

2. TSIの技術的な核心:直噴と高圧縮比

TSIエンジンが「小さなエンジンで大きな走り」を実現できるのは、二つの主要な技術(直噴技術過給技術)を組み合わせているからです。

1. ガソリン直噴(FSIの進化)

TSIは、フォルクスワーゲングループのディーゼルエンジン技術である「TDI」(Turbocharged Direct Injection)からさらなる進化を遂げたエンジンです。

TSIエンジンの特徴の一つは、燃料のガソリンをシリンダー内に高圧で直接噴射することです。この直噴技術(FSI: Stratified Fuel Injection) により、シリンダー内でのガソリンの気化熱を利用した冷却効果が得られ、ノッキング(異常燃焼)が起こりにくくなります

ノッキングが起こりにくいということは、ターボチャージャーを組み合わせて高い過給圧をかけても、エンジンの圧縮比を高めに設定できることを意味します。これにより、エンジンのポテンシャル(効率と出力)が非常に高まります。

2. ターボチャージャーによる過給

ターボチャージャーは、エンジンの排気ガスを利用してタービンを回し、強制的に空気をシリンダーに送り込むことで、エンジンの出力を高めます。TSIは、このターボの力を最大限に活用しています。

TSIエンジン搭載モデルは、例えばポロのモデルラインアップ(TSI Active、TSI Style、TSI R-Lineなど)やゴルフの標準グレード(eTSI Active Basic、eTSI Style、eTSI R-Lineなど)に採用されており,、フォルクスワーゲンの中心的なパワートレインとなっています。また、フォルクスワーゲンの「ザ・ビートル」にも、低燃費高出力のTSIエンジンが搭載され、優れたパフォーマンスを発揮しました。

 

 

3. 「eTSI」で環境性能をさらに向上

▼eTSIを備えたGolf

(出典:フォルクスワーゲンHP

電気自動車(EV)時代の到来を受け、2019年にデビューしたゴルフ8(8代目ゴルフ)では、TSIエンジンがさらに進化し、「eTSI」というドライブトレインが採用されました。

eTSIは、48Vのマイルドハイブリッドシステムを追加したTSIエンジンのことです。

このマイルドハイブリッドの追加により、走行中のエンジン停止が可能となり、さらなる燃費性能の向上が図られています。ゴルフ8の標準グレードには、このeTSIモデルが含まれており、実用性に優れています。

 

 

まとめ:TSIは「効率」「走り」「進化」の三位一体

▼LUDIXにてカスタムされた、Golf TSI コンフォートライン

フォルクスワーゲンのTSIエンジンは、「Turbocharged Stratified Injection」という名の通り、「過給(ターボ)」「直噴」「ダウンサイジング」という現代のエンジン技術の粋を集めたシステムです。

このTSI技術により、ゴルフやポロといったVW車は、小さなエンジンにもかかわらず、低回転からストレスなく、キビキビとした余裕のある走りを実現しています。さらに、最新の「eTSI」ではマイルドハイブリッドを組み合わせ、環境性能と効率を飽くなき追求しています。

あなたがもし、経済的で日常の使い勝手が良く、かつ「運転の楽しさ」を犠牲にしたくないという考えでゴルフを検討しているのであれば、このTSIエンジンこそが、まさにその希望を叶える最適な選択肢となるでしょう。

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